台湾で公聴会―東京五輪「台湾正名」住民投票を巡り:台湾は日本の生命線!

投稿日 :2018年3月18日

台湾で公聴会―東京五輪「台湾正名」住民投票を巡り
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2018/03/16/Fri

■「台湾正名」の可否を問う住民投票は実施できるか

台湾で、東京五輪での台湾代表の名称を「中華台北=チャイニーズタイペイ」から「台湾」に改めるよう訴える二〇二〇東京五輪台湾正名行動聯盟と、その執行機関である二〇二〇東京五輪台湾正名行動小組(グループ)は二月五日、四千四百八十八人の署名を添えて内容の住民投票の提案を中央選挙委員会に対して行った。

投票とは全国に対し、以下のように問うものである。

「あなたは『台湾』(Taiwan)の名義で、すべて国際スポーツ大会及び二〇二〇東京五輪への参加申請を行うことに賛成しますか」

これが受理されれば、次は十一月の統一地方選挙と同時に全国国民を対象に実施させるべく、投票発議に必要な二十八万人分の署名の収集に乗り出すことになる。

そこで一刻も早い受理が求められているのだが、同委員会はいまだそれを渋っているのだ。この住民投票案が、公民投票(住民投票)法第二条第二項が定める「立法発案であること」との条件を満たさない恐れがあるとの理由でだ。

かくて三月十四日、教育部体育署(文科省スポーツ省)、外交部(外務省)、チャイニーズタイペイ五輪委員会の代表、そして著名な五輪メダリスト、紀政氏を筆頭とする七名の提案者を呼び、公聴会を開いた。

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■台湾正名「住民投票」推進側が展開した正論

公聴会の議題は(一)本案は重要な立法発案に属するのか、(二)本案は公民投票法第二条第二 項の規定に反していないか、(三)本案は諮問的住民投票ではないのか。

つまり本案は実施に値しない可能性があるということを中央選挙委は問題にしているのである。

そこでこの日、紀政氏はおおよそ次のように説明した。

―――台湾代表の正名は明確な論拠があり、さらには前例もある。諮問的な投票では断じてない。

―――五輪憲章第三十条は、「NOC(国内五輪委)の名称はその国の領土の範囲と伝統を反映するものでなければならず、 IOC(国際五輪委)理事会 の承認を得るものとする」とあるが、「チャイニーズタイペイ」は領土の範囲と伝統を反映していない。選手の多くも台北出身ではない。「台湾」の名であれば、より五輪憲章に符合することになる。

―――台湾選手は一九五六年のメルボルン五輪では「フォルモサ」の名で、六〇年のローマ五輪と六四年の東京五輪、六八年のメキシコシティー五輪では「タイワン」の名で参加している。また正名には前例があり、オランダ五輪委は一九九二年、「ネーデルランド」五輪委への改名をIOCに申請し、許可されている。

―――したがって「正名」には正当性と実現可能性があり、オリンピニズムにも符合する。

以上はすべて事実に基づく言論である。


■台湾政府の弱腰姿勢で台湾の尊厳は守れるか

しかしこれに対し、政府側は反論したのである。

たとえば外交部は「正名はローザンヌでの合意(「チャイニーズタイペイ五輪委」の名称受け入れに関するIOCとの合意)に違反する恐れありと指摘した。体育署も「我々は長い間国際スポーツ大会から締め出され続け、チャイニーズタイペイと名乗ることでやっと参加できるようになったのだ」と強調。

これまでも民進党政権は「(チャイニーズタイペイの名称は)不満だが無理をして受け入れるしかない」といったコメントを繰り返してきたが、これは事勿れ主義というべき弱腰姿勢だ。そもそもIOCが「チャイニーズタイペイ」の名を台湾側に押し付けたのは、中国の圧力を受けてのもの。政府はそうした不条理さを打開し、台湾の尊厳を守ろうとすれば、事を荒立てるだけで損であるとの判断なのだ。

そこで提案者側は、以下のような正論を展開した。

―――国際的な取り決めは廃止、変更が可能。台湾が排除されたのは、当時『漢賊並び立たず』(中華人民共和国との共存拒絶)との立場に立つ国民党政権が使用に固執していた『中華民国』の名称のためだった。

―――実際に政府は「台湾」の名での参加について希望表明したことはないし、正式に参加申請したこともない。体育署にはこうした歴史的背景をよく調査していただき、誤った情報を発するのは止めていただきたい。

まさしくその通りなのである。


■正名運動は中国を怒らせるが台湾を守る

台湾の複数のメディアは公聴会に先立ち、台湾正名は台湾のスポーツ大会の参加権を奪うと強調する報道を行い、政府もそれと同じことを主張したわけだが、まさに愚かな事勿れ主義だ。

メディアは親中で、政府は恐中(恐中もまた親中の一種だが)。そうした勢力が「誤った情報」で世論を惑わしてきたのである。提案者側が「歴史的背景をよく調査して」と訴えたのは、そのためなのである。

親中であれ恐中であれ、台湾正名の可否を問う住民投票が実施に向かえば、中国が激怒するのは必至だとわかっている。そもそも中国は、台湾国民が住民投票という民主主義的な方式で、「台湾は台湾。チャイニーズタイペイ(中国領台北)ではない」との事実を世界に表明するなど断じて許すことができない。なぜならそれは自らの「一つの中国」宣伝に大きな打撃を与えることになるからである。

しかし台湾にとってそれは、国際社会に事実を理解させ、中国の台湾併呑政策への国際的抑止力を形成させる大きな一歩となるだろう。

今台湾の政府、国民に求められるのは、まずはそうしたことを敢行する勇気だと言っていい。


■台湾人は友好国日本の台湾支持にも期待

この日、紀政氏は、有力ネットメディアの民報に寄稿してこう述べた。

「台湾と日本は長年友好関係にあり、日本の親台の人々や団体は二年前から台湾正名を支持する署名活動を行っている。スポーツ界に身を置く私から見れば、いまこそ自分たちが主導的に自信を持ち国際社会に対して正式に正名の願いを表明するべき時なのだ」

「今台湾社会が行うべきは、全国の人がともに台湾人及び台湾選手の尊厳を強調し、東京五輪に向けた正名住民投票を支持することだ。下から上への民主的な方式で、正式に国際社会に向け声を挙げ、それを政府の国際的参与の後ろ盾にすることである」

「人は自らを助くる者を助ける。私達は投票の実現後、友好的な開催国である日本が、台日間の深い信頼関係に基づき、台湾が台湾の名で世界に向かわせてくれることを期待している」

このように、台湾の尊厳、存続のために中国及び国内の親中勢力と闘うのがこうした台湾の人々なのだ。それと同時に我々日本人もまた、アジアの平和のため、中国及び日本国内の親中勢力と対抗しなければならない。日台の信頼関係を武器にしてだ。

そしてそれこそが二〇二〇東京五輪台湾正名運動というものの意義なのである。