反中運動への偏見を捨てようー何が正しいかを見極めて : 台湾は日本の生命線!

投稿日 :2016年7月7日

反中運動への偏見を捨てようー何が正しいかを見極めて
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2016/07/07/Thu

先日、台湾で開催されたリトルリーグのアジア太平洋地区予選、チャイニーズタイペイ対中国戦で、台湾独立派団体のメンバー数人が観客席で「台湾はチャイニーズタイペイではない」「台湾は台湾だ」と書いた横断幕や台湾独立派が好んで用いる緑の台湾旗を広げた。

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台湾で開かれたリトルリーグの台中戦で中国チームは台湾独立運動家たちが広げた「台湾はチャイニーズタイペイではない」との横断幕に抗議して試合を拒否。そこで主催者や観客は横断幕の撤去を要求する騒ぎが発生した。これを日本人はどう見るか

言うまでもなく「チャイニーズタイペイ」とは、「台湾」「中華民国」の名では国際試合に出場できない台湾代表に与えられた国名代わりの呼称である。このように「中国領台北」と自称さえなければ、台湾併呑を目指す中国が怒り、自国代表のボイコットも辞さぬと大騒ぎするからだ。

かくて自国の栄誉の名誉のために奮闘する台湾代表は、奮闘すればするほど、自国の主権を矮小化、否定するはめになるのだ。まるで中国の危険な政治宣伝マンのようにである。

そうした状況を打破すべく、あの日メンバーは試合開始三十分前から、観客席で幕や旗を広げたところ、それを見た中国チームがベンチに引き籠って試合ボイコットを仄めかし、主催者にそれらの取り締まり要求した。

それに慌てた主催者はメンバーに対し、「子供たちにチャンスを与えて」「試合中止で世界の笑いものになりたいか」といって説得。「しまえ、しまわぬ」と押し問答となった。

そこで苛立ったのが、早く試合を見たい台湾人の観客達だった。「スポーツに政治を持ち込むな」などとして、メンバーたちに怒りの「帰れ」コールを連呼し始めた。

以上の経緯は「台湾魂に中国チーム狼狽! 「台湾はチャイニーズタイペイではない」との訴え受けて試合拒否」と題する本ブログの七月四の記事で伝えた通りであるが、その一文で私は、中国の姿勢に無警戒な主催者や観客など台湾人の反応にも疑問を呈した。

そしてその際、次のようにも書いた。

ーーー私は長年日本人相手に台湾支持を訴える言論活動を行ってきたからわかるのだが、このような中国に「寛大」な台湾人に、日本人の多くも共鳴すると思う。もし現地にいたら、一緒になって「スポーツに政治を持ち込むな」と迷惑顔を見せたことだろう。

ーーー日本人の少なからざるはそういうものなのだ。この一文を読む人の間でも、すでにそうした反応があるのではないか。

そうすると案の定、そうした「反応」が見られた。ある方が早速コメントを寄せ、中国の台湾に対する圧力は非難する一方で、次のような考えも書きつづって来たのだ。

「真面目に野球を練習してきた台中両国の選手の試合に乗り込んで試合の応援とは無関係な旗を持ち出してきたら中国チームが悪意を感じて試合拒否するのも一理ある」

「試合を見に来た観客からブーイングを浴びるのも当然の帰結」

こうした見方に、「そのとおりだ」と共鳴する日本人は他にも大勢いるはずである。

だが今回について、私はそうは思わないし、そうした物の受け止め方に日本人自身が一考すべき問題があるように感じるので、以下に私自身の考えを述べたい。


■「政治運動」に対する日本人の偏見

私が今回の観客の迷惑顔や怒声に想起したことが一つある。

それは数年前、ある地方都市の駅前で、小中高の教科書に台湾を中国領土と誤記載させる文科省の教科書検定の誤りを糾すための署名活動を行ったときのことだ。

拡声器で署名の協力を呼び掛けたところ、二百メートルほど離れた空き地で開かれていた歌や踊りのコンテストか何かの主催者か観客が、私達の所へ文句を言いに来たのだ。「みな一所懸命練習してきたんだ。邪魔をしては可哀そうだ」と。

実際には私達は「邪魔」はしていなかった。逆に向こうの大音響に、こちらの声が揉み消されていたのだが、実際がどうかなど、その人にどうでもよかった。

要するに「政治活動」に偏見を持っていたのだ。その時の我々を見下す表情が、すべてを物語っていた。

こういった偏見は日本人の間で広く持たれている。政治運動というものを特定の団体の利益や自己満足のために行う卑しい活動と受け止めているらしく、それに顔を顰め、または一言言わずにはいられなくなる傾向は、日本社会に確かにある。

今回コメントを寄せてくれた人にも、もしかした同様の思いがあるのだろうか。

「真面目に野球を練習してきた台中両国の選手の試合」の会場を、政治活動が犯すことは許されない聖域と見て、中国チームや観客に同情しているようだが…。


■スポーツの聖域を汚した元凶は中国

もちろん、スポーツの試合会場は聖域視されるべきとするのが日本人の常識ではあるが、しかし中国チームに同情するのは間違いだ。

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「台湾はチャイニーズタイペイではない」と書いた横断幕の出現に中国チームは試合拒否を決めた。悪いのは中国人を怒らせた横断幕か、それとも怒った中国人か

今回の会場が、本当にそこまでの「聖域」であるのなら、まずは主催者が台湾の存立をも危機に追いやりかねない中国の政治宣伝の影響を排除しなければならなかった。すなわち「チャイニーズタイペイ」という呼称をである。

もっともその呼称を用いるのは国際的な規則だから排除は無理だから仕方はない。しかし仕方なくなっていること自体、すでに会場は中国の政治的影響下に置かれ、政治からは自由な聖域ではなくなっているということなのだ。

それでは、この聖域たるべき会場をますます政治宣伝の場に変えてしまったのは誰かといえば、中国チームの責任者だ。

くれぐれも勘違いしてはならないのは、今回の騒動の元凶として非難されるべきは、「台湾は台湾。チャイニーズタイペイではない」と書いた横断幕を広げた活動家たちではなく、たかだかそれだけのものに猛反撥した中国側のその人物であるということなのである。

彼が何をやらかしたかを振り返ろう。

要するに中共の台湾侵略政策に付き従い、試合のボイコットまで仄めかして台湾の主催者を脅迫し、観客の言論の自由を封殺させようとしたのである。

これは中国人が国際的舞台でしばしば見せる台湾人への軽視、侮辱の行動でもある。そうした傲慢な心理は、こんな小役人(チーム責任者)にまで持たれているのだ。


■中国の圧迫に苦しむ台湾人の気持ちになろう

中国チームの責任者が、というより中共全体が、「台湾は中国の一部ではない」と主張する台湾人に過剰な反応を見せるのは、それが真実であるのを知っているからだが、もしこの人物が今回そのような反応を見せなければ、何の騒動も起こらなかった。

「台湾は台湾だ」との至極まっとうなアピールも、めでたく無事に終了したはずである。

しかしそうではなかった。「チャイニーズタイペイ」との政治的呼称を強要するためなら、「真面目に野球を練習してきた台中両国の選手」の努力をも無駄にするのも辞さない構えだった。

したがって「スポーツの試合会場を政治的に利用するな」と非難したいのであれば、このように台湾を侮辱するばかりか、選手の子供たちよりも「政治」を優先させたこの中国人にこそ非難を加えるべきなのである。

そしてそうした中国の政治的攻勢に対して「台湾は台湾だ」と叫んだ台湾人を政治的だと批判するなら、他国の人々の同様の行動に対しても批判すべきだ。たとえば自国代表を応援するため国旗を振る各国の人々の行為などもだ。

もし日本代表が「チャイニーズトウキョウ」との呼称を強要されたら、日本人ならどうするか。そのように、中国の圧力に苦しみ続ける台湾人の気持ちになって考えることも大切だ。


■国と子供の未来のために立ち上がる人々もいる

観客の「ブーイング」も、「当然」だなどと支持したいとは思わない。

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「出去」(出て行け)と連呼して怒りをぶつける観客達。何に対してどう怒っているのかが問題だ

自分たちが楽しければそれでいいと思っていたのだろうが、自国の尊厳を守ろうとしている人々に罵声を浴びせるなど愚かすぎる。

私も経験済みだからわかるのだが、おそらくその時、メンバー達は本当に情けなくなったと思う。「自分のことばかりでなく、もう少し国や社会を考えたらどうだ」と。

ブーイングの観客はみながみなノンポリだったと言うより、むしろその多くは「台湾は中国の一部だ」と思い込みたがる「外省人」の中国優越主義者だったのではないか。もしそんな売国的な連中であれば、同情の余地などまったくないと思う。

いずれにせよ、あそこの観客達にも、上述のような政治活動に対する偏見が持たれていたのだろう。

実は私自身も左翼の不純な売国活動については昔から顔を顰めて来たなど、政治活動というものに対してしばしば懐疑的だ。だが世の中には、日本においても台湾においても、自国を危機から救い出し、子孫の将来を守りたいという、やむにやまれぬ思いで政治活動に参加する人々も大勢いるのである。


■スポーツの政治利用を続ける中国の追放こそ

日本人も台湾人も、どの政治活動が不純で不純でないか、つまり何が正しくて何が間違っているかを判別する能力を備えるべきだ。そうしないと中国の巧妙な工作にはなかなか対抗できないだろう。

結局はあの日は、中国の宣伝を打ち破ろうと立ち上がった人々が悪者扱いされてしまったわけだが、それは「台湾は台湾だ」と主張する台湾人をトラブルメーカーに仕立て上げる、中国得意の策略の成功を意味した。

そうした中国の謀略はつねに、お人好しというか、事勿れ主義というか、要するに正邪を見分ける力に劣る無責任な国や人に支えられるものなのだ。

中国に言われたら言い返す、やられたらやり返す、圧迫される人を見たら手を貸し加勢する。それをせずにただ中国の跳梁跋扈を放置すれば、ますますあの国は増長するだけなのだ。

二〇〇八年の北京五輪を中共独裁体制による国威発揚のイベントとしたように、中国はスポーツの政治的悪用に異常なる精力を傾ける国なのある。

よって「スポーツに政治を持ち込まない」との原則を徹底させたい人は、中国の国際試合のボイコットを歓迎するべきである。いやむしろ進んで中国の追放を求めるべきだ。

中国さえ追放されれば、台湾も二度と「中国領台北」との屈辱の政治的呼称を押し付けられずに済むことになる。

なお今回コメントをくれた人は、あのような活動は試合会場外において、直接中国チームに向けてやるべきだとも提案していた。

それはそれで結構な建策ではあるが、しかし彼らの活動の目的はあくまでテレビ局などメディアが集まる試合会場で、内外にアピールするのが目的だった訳で…。

世界中が「チャイニーズタイペイ」の呼称に惑わされ、「台湾は中国の一部。中国の台湾統一政策に一理あり」との印象が広がる中、あまり悠長なことも言っていられないのではないか。