台湾:住民投票の請求相次ぐ 政権が要件緩和:毎日新聞

投稿日 :2018年9月17日

台湾:住民投票の請求相次ぐ 政権が要件緩和:毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20180916/k00/00m/030/027000c
2018年9月15日 17時51分

 【台北・福岡静哉】台湾で住民投票の請求が相次いでいる。蔡英文政権が請求要件を緩和したためで、計10件の署名簿が提出された。署名簿の審査を経て、投票は11月24日の統一地方選と同時に実施される見通し。住民投票法は総統に対し、投票結果の実現のため必要な措置をとるべきだと定めている。蔡政権の方針と異なる結果が出れば難しい対応を迫られる。

 蔡政権は市民の政治参加を促すとして、住民投票の請求に必要な署名を有権者の5%から1.5%に引き下げ、投票の成立要件も投票率50%から25%へ緩和する改正法を昨年、成立させた。台湾では過去にも数回、住民投票が実施されたことはあるが、投票率50%の壁に阻まれ、一度も成立していない。

 今回は成立要件が投票率25%に大幅に緩和されたうえ、統一地方選と同日実施のため、成立の可能性が高まっている。

 住民投票が請求されているのは、脱原発▽福島県など日本の5県産食品の輸入解禁▽同性婚▽2020年東京五輪に「台湾」名義で参加--の賛否など10件。いずれも要件の約28万人を超える署名簿が提出された。

 住民投票法は「重要な政策」について、投票結果と異なる政策を2年間は実施してはならないと定め、政権の政策を事実上、制限する。

 脱原発は蔡政権の看板政策。5県産食品の輸入解禁に反対が多数を占めれば日台関係に大打撃だ。同性婚を巡っては17年5月、2年以内に認めるべきだとの司法判断が出ている。五輪に従来の「チャイニーズ・タイペイ」ではなく「台湾」名義で参加すれば、「一つの中国」原則を掲げる中国が激しく反発することは必至だ。

 一方、最大野党・国民党が主導した3件の署名簿について中央選挙委員会は、筆跡が酷似した大量の署名があるなど、不正の疑いがあるとして調査している。統一地方選では県、市など数多くの首長・議員の投票があり、投票の際に有権者が混乱するとの懸念も出ている。